暗室

約30年前の話です。
もうあの頃教授だったお年を召した先生方は
ほとんどご存命ではないんだろうな。

女子校あるあるで、
若い助手の男性は身を置いているだけでそれなりにモテてしまう現象がありまして。

この契約解除になったW先生も、
長髪のひげ面で、
「イケメン風味」ではあったものの、
けっしてイケメンではなく。

作業衣として白衣を着用することがあり
白衣で私服のセンスがぼかされ
なんだかステキに見えてしまっていたようです

W先生と会話をしたとき
ホネがないというか、人としてのぐらつきみたいなものを感じました。

W先生も一応作家活動をしていたようですが、
作家として何かが欠けている感じがしました。

それは私が自分自身にも感じていたことで、
「この人は私と同じくらいダメだ」
と思っていました。

ゴメン。

卒業式の日、
W先生が契約解除されたと聞いて、
ヌード写真のネガとW先生の契約解除、
点と点がいっきに私の中でつながりました。

写真って
被写体だけが写るわけじゃなくて
撮影者の作家としてのグラつきみたいなものも
写りこむんです

W先生自身が持つ
作家としてのグラつきと
あのネガの作品としてのグラつきが
私の中で完全に一致した感覚がありました

あのネガを見て、
撮影者がとてもスケベな気持ちで撮影しているのに、
それをひた隠しにしようと
美しい表現にまとめようと無理をしている感じがしました。

スケベを見せないようにがんばったけど
スケベ心がべったり焼き付いているようなネガ(笑)

当時
写真家では 荒木経惟氏や加納典明氏が活躍していた時代で
己の欲望を肯定し、突き抜けた写真を目にする機会が多くありました。

そんな時代だったので
欲望を隠そうとして失敗している写真は
「残念な…」
というのが正直な感想でした。

なんだかこうして写真について書いていたら
写真が撮りたくなってきました。

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